翻訳家の私がお勧めする英語上達の方法

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「どうしたら英語がうまくなりますか?」

翻訳という職業柄この質問を何度受けたことか。この質問をされると、私はいつも同じように答える。「実は私も教えてほしいと思ってるんです。」

米国の大学院を修了し、修士号の学位をもって胸を張ってアメリカでバリバリと仕事をしている。どうも質問をされた方は、私に対するかなり誤ったイメージをお持ちのようだった。アメリカで何年暮らそうとも、私の英語力は皆さんが期待するほどには立派なレベルではない。それでも、一応翻訳という仕事をし、コンサルタントとしてアメリカの企業で仕事をしてもいたので、ある程度、こんな風にしたら英語もそれなりには上達するかな?という目星は着くようになった。

桃栗3年柿8年、英語は10年

まず、1,2年で劇的に英語力がつくかというと、無理である。そんな方法があったら本文冒頭の珍問答ではないが、私も教えてほしい。ピアノの練習を始めて1年でオーケストラに交じって演奏できるようにはならないように、剣道を始めて1年で8段になれないように、掛け算九九から算数の弁居を始めて1年で大学レベルの微分積分ができるようにならないように、英語を始めて1年で英語を母語として話すイギリス人やアメリカ人と同じような言語能力を身につけることはできない。

英語に費やす量が圧倒的に少ない。

英語を始めて1年ではなく何年も学校で勉強していた、と主張する人も結構いるが、実際のところ時間換算にするとそれほどの時間は費やしていない。試しに今までの人生で何時間英語で話をしたか、計算してみるとすぐにわかる。多分100時間を超える人すらほとんどいないのではないか。英語を多読して英語力を伸ばそうとするとても素晴らしいプログラムがあるそうだが、目標としている100万語など、日本語で同量の本や書類に換算すれば、仕事をしている人であれば1か月も経たずに達成してしまう程度のレベルに過ぎない。つまり、英語に費やす分量が圧倒的に少ない。

人は一日にどれくらい話をするのだろう?

Previous research has shown that women talk almost three times as much as men. In fact, an average woman notches up 20,000 words in a day, which is about 13,000 more than the average man. 

抄訳 以前の研究では、女性は男性の約3倍話すことがわかった。女性は平均一日に2万語話し、平均的な男性より1万3千語多く話す。

Why Women Talk More Than Men: Language Protein Uncovered
Catherine Griff Science World Report http://www.scienceworldreport.com/articles/5073/20130220/why-women-talk-more-men-language-protein.htm

女性が男性よりもおしゃべりなのは洋の東西を問わず同じようだが、一日2万語というと、1文あたり平均15語として、およそ1300文を毎日頭の中で英作文しながら、それを話している計算になる。

日本語と英語の距離

そのうえ、日本語を母語とする私たちにとって、英語は辺境の言語になる。文法の面では、言葉の順番がまるで違うし、音声の面では、日本語の音声のくくりの範囲外の音が英語にはたくさん存在する。そのうえ、日本語では、察する、という文化が異様に発達しているためか、言葉の省略がとても多い。「言ったよね!」と部下を叱る場面でも、英語では「私は君に言ったよね!( I told you!)になる。英語はいちいち「誰が誰に」を言わないと気が済まない言語だ。また一つの言葉をとっても、外来語であるマクドナルドを、マックとかマクドなどと気軽にそして勝手に省略してしまう日本語と違って、本家本元の英語では縮めることなく、「マクドナルド」と律義に発音する。

New York TImes HP (2019/12/19) https://www.nytimes.com/

お勧めは日本語を英語に変換する練習

どうして日本人は英語ができないか?という話を延々としても何ら得るものはないので、私のわずかな経験から英語力が向上する方法をお伝えしたい。それは、英語から日本語への変換ではなく、日本語から英語への変換を練習することだ。英語の学習というとまず、英語ありきになる。NHKのラジオ講座にしろ、多読100万語にしろ、学校の教科書にしろまず、英文が書いてある。当たり前なのだがどちらかというと一方通行的だ。日本語から英語に変換するという発想をしたことがあるだろうか?私が英語が満足に話せない当時、最も頻繁に頭の中で行った作業は、まず頭の中で英文を作ってみて、それからその英文を口に出すことだった。本来は考えながらすぐに言葉を発するのだろうが、そこまで言語に精通していない段階では、まず頭の中で英文を作る。そしてそれを声に出す。英語のできなかった(今でも大したことはないが)頃の私のこの方法を、英語上達のための練習として活用してみると、次のような方法が考えられる。

  1. 日本語を頭の中で(又は紙に書いて)英語に変換する
  2. その英語を口に出す

まあ、英作文なのだが、必ずしも紙に書かれた文字を英語にするというわけではない。例えば、テレビでNHKの朝の連ドラを見ながら、俳優のセリフを一つ選びだしてそれを英語に変換してみる。

「昨日お姉さんのところに行ってきた。」だったら、 “I went to see my sister yesterday. “と頭の中で英語に変換して、それから口に出してみる。実際英語に変換してみると、とても簡単な会話ですら英語にするのに苦労することがわかる。私たちの英語学習が、英語=>日本語の方向に偏っていて、日本語=>英語への変換、つまり発信の練習は全然していないことになる。しかし、この練習をしていくと、慣れもあって前述のNHKのドラマくらいなら、同時通訳者のように頭の中で英文を作っていくことができるようになる。

英語を別の英語へ言い換える練習へ

簡単な方法なのだが、慣れてきたら次のステップへ進むといい。日本語を英語に変換することから、今度は英語を別の英語に言い換える練習、そして自分の意見を日本語を介さずに直接英語で頭の中で考える練習へと進んでいけば、自然と日本語を離れて、英語だけの環境でも言語を操れるようになる。

私自身あまり偉そうなことは言えないので、この辺でお茶を濁すことにしよう。

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